Kodak Retina #117
平成9年のある日、阪急梅田駅の1階広場にあった河原写真機店のウインドーに美麗な
オリジナルRetinaが売り出されていた。
オリジナルRetina#117は、LeicaやContaxの高級路線ではなく、ドイツコダックが1934年12月に大衆向けに発売した最初の35mmカメラである。
クラシックカメラというのは、珍品を見つけても直ぐに買わずに、心静かになるまで待つべきだというのが私の信念である。
(場合によっては、かなり怪しい信念ではあるが・・・)
よって、しばらくは羨望のまなざしで、前を通るたびに眺めていた。
しかし、募る思いがそうさせたのか、年末の賞与が入ったため、平成10年1月10日思い切って買い求めた。

オリジナル・レチナ(Retina#117)が我が家にやってきた!
手許のレチナ族ではレチナII、レチナIIICに続く3台目であるが、レチナ愛好者にとって一番最初に発売されたオリジナルレチナは、信仰の対象であり、ありがたい・かたじけないもので、お守りのような存在なのだ。
因みにこのカメラの販売と同時にコダックが発売を開始したパトローネ入りの35mmフイルムは、発売当初は“for Retina”としてレチナ専用だったが、もちろん、LeicaやContaxにも使用可能なため、ほどなく“for Retina,Leica,Contax”と記され、21世紀に至るフイルムのスタイルを樹立したところが、ものずごくえらい。
このフイルムの登場は、大衆カメラ“Retina”の登場より遥かに大事件であった。

フイルムのことはさておき、この#117を嚆矢として、そのあとレチナシリーズは、1970年代まで製造され、姉妹機のレチネッテ族を含むと50種類ものカメラを擁する大所帯となる。

レンズ部分とボディはジャバラで繋がれているため、使用時はこのような形状だが、閉じればペタンコになるところが最大の魅力である。

蓋にある“KODAK”の銘あるスタンドを立てておいた姿が、正式なスタイルである。
また、黒塗りボディーに怪しく輝くニッケルの組合せは、クラシックカメラの王道ともいうべき装いである。
レンズは、シュナイダー・クセナー5cm f3.5・・・テッサー型の3群4枚 よく写るレンズである。

そして、注目すべきは、このカメラケースである。
上蓋部分にRetinaのインボスがあるのでオリジナルケースではないかと思われる。
「思われる」というのは、いろいろ資料を調査しても確証の得られるものが見当たらないからだ。
しかし、インターネットの画像検索すると、海外であるが、同ケースとともに写る#117の画像があるので、オリジナルではないかと考える。

ケース入れると、このように少しも隙間なく、ぴったり収まる・・・このぴったり感がたまらない!
外装の傷や、擦り切れた内側生地の様子を見ると、とにかく持ち主に長年愛されてきた幸せな写真機であることがわかる。
写真機を買うと、とにかく試写してみたくなるのが人情である。
平成10年1月31日快晴
満を持してフイルムはFUJI-REALA(ISO100)を装填してフォト散歩に出かけた。

無限遠ではなく、近距離にピントを合わせてみる。
もちろん距離は目測であるが、絞りがf11なのでピントをはずすことはない。
カラーの再現性も問題はない。

金属質な真新しい交番も撮影する。1/100 f11
快晴であれば1絞りオーバーではあるが、ネガフイルムのラティチュード(寛容性)のおかげで神経質になる必要はない。
距離計や露出計からの呪縛から解き放たれたような爽快な気分すら感じる。

天保山マーケットプレースのウインドーショッピング 1/100 f11

明暗差の大きな被写体でも明部が白飛びすることなく、暗部もつぶれにくいようだ。



あえて、太陽を入れて真逆光でも撮影してみた。
右側にゴーストが出ているが、レンズ構成がシンプルなのであまり気にならない。味わい程度のものである。

マーケットプレースの内部 1/50 f3.5
絞り開放での写りが見てみたかったが、これだけのコントラストがあれば問題ない。

意地悪なモザイク模様の床面を撮ったがよく再現されていると思う。 1/50 f3.5
過去にもこのカメラを紹介した記事があるが、撮影したネガが出てきたので作例を含めて再掲した。


Kodakの名玉 Ektar 47mm f2
ドイツKodak社が戦前の1934年から戦中・戦後にかけて製造した大衆向け35mmカメラに
Retina(レチナ:網膜)という名称を付された名カメラがある。その種類が多く形状もバリエーションがあるため、愛好者は多い。
我が家のコレクションの中では、そのRetina族(姉妹シリーズのRetinetteを含む)が、オリジナルをはじめとしていつのまにか一大集団を形成している。

このとおり・・・蛇腹を有するスプリングカメラなので、前ブタを閉じるとコンパクトになり嵩張らないためか、こんな数になってしまった。同じものは一つもない。
以前にも、本ブログでオリジナルの#117やレチナ#119を紹介した事があった。
今回は、その中でレンズに米国のEastman Kodak Co.Rochester,N.Y.との銘があるKodakの名玉Ektar 47mm f2を装備したレチナⅡ型 #011を取り上げたい。

これは、1946-1949年にかけて製造されたモデルで、終戦直後のレチナⅡ型となる。このⅡ型には、レンズがシュナイダー社のクセノン50mmf2とローデンシュトック社のヘリゴン50mmf2のほかに、コダック社オリジナルのエクター47mmf2が装着されているものがある。
エクターの名称は、Eastman Kodak Co.の頭文字EKにレンズの一般的接尾語ARを付けてEKTARとした造語で、Kodak社の並々ならぬ力の入れようが感じられるフラッグシップレンズである。
奇しくも、私がクラシックカメラの泥沼に入る端緒となったカメラがこのレチナⅡ#011である。
蛇腹を備えたクラシックないでたちであり、閉じればコンパクトになり、しかも写りがすばらしい。最初に手に入れた個体は、レンズがシュナイダー社のクセノン50mmf2付であったが、それは売却してしまったので今は手許にない。
今回の対象は、その甘美な蟻地獄にどっぷり浸かった数年後に入手したエクター47mmf2付である。
フイルムを入れて撮影すると、エクターは、クセノンと比べより濃厚な発色をするので不思議なレンズだと思っていた。
世間的には、このレンズは、今でもコレクターズアイテムとなって高価に取引されている、米国のカードンに装着されているレンズと同じで、4群6枚変形ガウス型のレンズ構成をもち、レチナの中でも特に人気のある個体である。
しかし、このボディの不具合か、巻き上げ中にフイルムのスプロケットが巻き上げ爪から外れてシャッターチャージができなくなり、その後の撮影に問題を起こすことが度々あり、使う気が失せたカメラとなっていた。

そこでこの度、意を決して、レチナの筐体から、レンズとシャッターマウントを取り外して、SONY-α7で利用できるようにM42マウントにすべく移植手術を実施した。
文字で表すとすんなり移植ができたように見えるが、実はシャッターマウントの取り外しに何週間も悪戦苦闘した。
シャッターマウントの取り外しには、まず後玉を取り外す必要があるが、それがどうにもこうにも全く動かない。
ネジがかなりきつく締められているようだ。
最終的には、後玉を包んでいる金属鏡胴のエッジに三角ヤスリで慎重に切れ込みを入れて、そこにカニ目レンチを立てて回転させるという、強硬手段に出た。
何日も悩んでいたが、ようやく外れた。
この時、外れた嬉しさに思わず家内に「苦労していたレンズがようやく外れたよ!」と喜色満面で報告したが、思えば無意味なことをしたものだ。

そこからはスムーズにことが運んだ。
内部のレンズシャッターユニットは、必要がないので取り外し、絞り羽根のみを残した。
本来のカメラの形態をとどめない加工というのは、本当に心苦しいが、使わないカメラより換骨奪胎した使うレンズにしてやったほうがエクターも喜んでいるだろうと・・・勝手な解釈をして納得している。

ピント合わせは、M42マウントのヘリコイドをかましてあるので、無限遠から、何ら問題はない。
前玉をみると、井戸底をのぞくような濃いブルーのコーティングが、怪しさを醸し出している。
なにやらレンズの製造年である1946年のアメリカ的な描写を予感させる。

手許にあった32mm径のAgfa社のかぶせフードがぴったりである。
逆光のシーンについては、レンズにコーティングがあるのであまり心配はしていないが、これで逆光への対応がより手厚くなった。
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Kodak Retina 幻の鏡玉 KODAK PUPILLAR
またその折りみ可能なコンパクトさが愛らしく、またライカやコンタックスの様な高価なものではないので、お手軽なコレクションアイテムとなっている。

以前コレクションからレチナの初期3種をご紹介したが、今回ご披露するものは、#126といわれるもの。
1936年3月から1937年10月にかけて約40,000台を製造したグループのものだ。
これだけ製造されていれば、別に珍しいものではないといえるが・・・さらあらず。
レンズが激レアものである。コダック・ピュピラー(KODAK・PUPILLAR)というもの。

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「レチナ#119」
先日うちにまた写真機がやってきた。
もちろん、カメラは、勝手にはやって来ない・・・安かったから買ってしまったのである。
コダック・レチナ一族の#119である。
初代の#117と二代目の#118はすでにコレクションにしているので、三代目の#119を見つければ買わずにはおれない。
(でもコレクションとしてレチナ族は増えに増え、すでに20種類を超えているのだが・・・。)
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「オリジナル レチナ #117」
今までにドイツ製カメラの超有名会社のライツやツアイスが製作した35mmカメラの最初期のもの・・・・ライカA型とやコンタックス?型をご紹介した。
それらの写真機が庶民にとって高嶺の花だった1930年代、一般国民を対象とした安価なカメラを意識した35mm小型カメラがドイツのコダックからついに1934年に発売された。ヤッター!!
それが、RETINA(レチナ)
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☆レチナ届く


オーストラリアからヤフーオークションで落札したカメラが届く。
ドイツKodakのRetina 1942年製
Retinaとはドイツ語で眼の「網膜」のこと。
網膜のイメージだとカメラよりフィルムのことでは?と思うのだが。
別会社でピピュレ(瞳)というカメラはあることにはある。
電池がなくても撮影できるカメラが大好き。それにジャバラカメラが。
前面の扉をたたむとペッタンコ。これがいい。コンパクト。
レチナ族は種類が多いがどれも掌に乗るほどの可愛いカメラだ。
1台、1台と集めているうちに17台になった。それぞれ仕様がちがう。
しかしまた1台増えた。
写真の一台は、どうやら改造された個体のようだ。
シャッターがプロンターであること。またレンズがシュナイダーのクセナーF2.8であること。
いままでに見たことのない機種である。権威あるレチナブックにも載っていない。
となれば一応、求めておかなければならない。
ということでだんだん台数が増えてくる。
いつのまにかカメラの総数70台。
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