Kodakの名玉 Ektar 47mm f2
ドイツKodak社が戦前の1934年から戦中・戦後にかけて製造した大衆向け35mmカメラに
Retina(レチナ:網膜)という名称を付された名カメラがある。その種類が多く形状もバリエーションがあるため、愛好者は多い。
我が家のコレクションの中では、そのRetina族(姉妹シリーズのRetinetteを含む)が、オリジナルをはじめとしていつのまにか一大集団を形成している。

このとおり・・・蛇腹を有するスプリングカメラなので、前ブタを閉じるとコンパクトになり嵩張らないためか、こんな数になってしまった。同じものは一つもない。
以前にも、本ブログでオリジナルの#117やレチナ#119を紹介した事があった。
今回は、その中でレンズに米国のEastman Kodak Co.Rochester,N.Y.との銘があるKodakの名玉Ektar 47mm f2を装備したレチナⅡ型 #011を取り上げたい。

これは、1946-1949年にかけて製造されたモデルで、終戦直後のレチナⅡ型となる。このⅡ型には、レンズがシュナイダー社のクセノン50mmf2とローデンシュトック社のヘリゴン50mmf2のほかに、コダック社オリジナルのエクター47mmf2が装着されているものがある。
エクターの名称は、Eastman Kodak Co.の頭文字EKにレンズの一般的接尾語ARを付けてEKTARとした造語で、Kodak社の並々ならぬ力の入れようが感じられるフラッグシップレンズである。
奇しくも、私がクラシックカメラの泥沼に入る端緒となったカメラがこのレチナⅡ#011である。
蛇腹を備えたクラシックないでたちであり、閉じればコンパクトになり、しかも写りがすばらしい。最初に手に入れた個体は、レンズがシュナイダー社のクセノン50mmf2付であったが、それは売却してしまったので今は手許にない。
今回の対象は、その甘美な蟻地獄にどっぷり浸かった数年後に入手したエクター47mmf2付である。
フイルムを入れて撮影すると、エクターは、クセノンと比べより濃厚な発色をするので不思議なレンズだと思っていた。
世間的には、このレンズは、今でもコレクターズアイテムとなって高価に取引されている、米国のカードンに装着されているレンズと同じで、4群6枚変形ガウス型のレンズ構成をもち、レチナの中でも特に人気のある個体である。
しかし、このボディの不具合か、巻き上げ中にフイルムのスプロケットが巻き上げ爪から外れてシャッターチャージができなくなり、その後の撮影に問題を起こすことが度々あり、使う気が失せたカメラとなっていた。

そこでこの度、意を決して、レチナの筐体から、レンズとシャッターマウントを取り外して、SONY-α7で利用できるようにM42マウントにすべく移植手術を実施した。
文字で表すとすんなり移植ができたように見えるが、実はシャッターマウントの取り外しに何週間も悪戦苦闘した。
シャッターマウントの取り外しには、まず後玉を取り外す必要があるが、それがどうにもこうにも全く動かない。
ネジがかなりきつく締められているようだ。
最終的には、後玉を包んでいる金属鏡胴のエッジに三角ヤスリで慎重に切れ込みを入れて、そこにカニ目レンチを立てて回転させるという、強硬手段に出た。
何日も悩んでいたが、ようやく外れた。
この時、外れた嬉しさに思わず家内に「苦労していたレンズがようやく外れたよ!」と喜色満面で報告したが、思えば無意味なことをしたものだ。

そこからはスムーズにことが運んだ。
内部のレンズシャッターユニットは、必要がないので取り外し、絞り羽根のみを残した。
本来のカメラの形態をとどめない加工というのは、本当に心苦しいが、使わないカメラより換骨奪胎した使うレンズにしてやったほうがエクターも喜んでいるだろうと・・・勝手な解釈をして納得している。

ピント合わせは、M42マウントのヘリコイドをかましてあるので、無限遠から、何ら問題はない。
前玉をみると、井戸底をのぞくような濃いブルーのコーティングが、怪しさを醸し出している。
なにやらレンズの製造年である1946年のアメリカ的な描写を予感させる。

手許にあった32mm径のAgfa社のかぶせフードがぴったりである。
逆光のシーンについては、レンズにコーティングがあるのであまり心配はしていないが、これで逆光への対応がより手厚くなった。
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