謎のレンズ Carl Zeiss Jena Tessar 4cm f:3.5
ファジー・コレクションの玉手箱の底には、出自のよく判らないレンズがいくつかある。
Carl Zeiss Jena Tessar 4cm f:3.5 もその一つである。
いつ頃我が家にやってきたのか、何故あるのかもオーナー自ら失念してしまっている。
小さいながらも名玉テッサーであるし、少しのネジ式のヘリコイド (ピント合わせのためレンズを前後する機能) もあるので、M42マウントのボディキャップに移植すれば、面白いレンズになるかもしれないと思って買ったような気がするが、定かではない。
ところがこのレンズがなかなかの曲者である。
フランジバック (レンズからフイルムまでの距離) が40.5mmしかなく、ミラー式一眼レフには利用不可能であることが判った。
それであればライカマウントに改造して、ヘリコイドがあるので目測で距離を測って利用するしかない。
しかしかなり面倒な作業となるため、そのままマイボックスの底に埋もれてしまっていたのかも知れない。
・・・・ところが時代は流れ、“小箱の肥やし”の状況は一変した。
SONYからミラーを使わない一眼レフが誕生し、我が家もそれを導入したことによって、ふたたび謎のレンズが陽を見る日がやってきた。
SONYのEマウントのフランジバックは18mmなので、あと22.5mmのスペースを何とかすれば利用できるのではなかろうか・・・と閃いたわけである。

幸い、手許のヘリコイド群のなかに18~28mmのヘリコイドがあるので、それをかましてみれば上手くいくような気がした。
試しにレンズを当ててファインダーをのぞくと、ギリギリ無限遠が出た!
これで普通のレンズとして使えると判断するや否や、改造にとりかかる。
この改造は簡単な工作で済んだ。
プラスチックのM42のボディキャップに後ろ玉が入るだけの円形の穴をドリルで開けて、あとは座金にある3箇所の止めネジでボディキャップに取り付けるだけである。

(M42のボディキャップに取り付けた改造後の状態)

(裏面の状態)
ところで、このレンズがもともとどんなカメラについていたものかが判らなかった。
Zeissなので、いい加減なカメラにはついていなかったはずである。
レンズのシリアルナンバーは、53万代なので、製造年月は、1922年(大正11年)頃である。
今から95年前のレンズということになる。
この当時の4cmの焦点距離ともなれば、アトム判やベスト半截判などの小型カメラしかない。
あれこれ専門誌を探したり、クラシックカメラ専科のツアイス特集なども漁ってみたが、ヒットなし。
もはや手詰まりかと思われたが、試しにシンプルな項目で、インターネット検索をしてみたところ、思わぬところで発見できた。
ずっと写真機を探していたので発見できなかったが、これは一般的なカメラではなく、映画撮影用の35mmシネカメラレンズであることが判った。

1926年にはツアイス・イコン社に統合される前のドレスデンにあるイカ社のキノモ(ICA-KINOMO)に取り付けられていたレンズである。製造時期もぴったりと合う。
時計針のようなヘリコイド指針は動画撮影のピントあわせ機能用であった。
とにかく、こんなパンケーキレンズが出来上がった。パンケーキというより「回転焼き」のようである。
レンズの出自も判り、改造も完成したところで、試写をするために出かけた。


穏やかな安治川内港越しにUSJのホテルマンション群を狙ってみた。
無限大・絞り開放であるがピントはOK 色合いやコントラストも悪くない。
ただし四隅に僅かに光量不足が見られるが、これはオリンパスPENのような35mmハーフサイズカメラに相当するシネレンズがもつイメージサークルの限界かもしれない。

中央部ホテル上部の拡大・・・これだけ拡大しても、破綻していないところが、さすがTessarである。
同じシネ用レンズとして手許にある戦後のアンジェニューも持ち出してみた。(こちらはフランジバックが17.5mmなので、Eマウントでもやや凹んだアダプターを使用する必要がある。)

このレンズも何に使う目的もなく、だだ梨地の鏡胴が美しいので買ったものだった。しかも捨て値だった。
いまではこの16mmシネレンズ用 (Cマウント) のマウントアダプターが売り出されているため、利用することができるようになった。

こちらは明らかにイメージサークル不足 受像子をAPSサイズに小さくして使わなくてはならない。
映画フイルムのサイズが、35mmと16mmとでは、同じシネレンズでもこれだけの違いがある。そして、フイルムサイズが同じである35mmシネレンズは、そのままでもカメラのライカ判(35mmフイルムのフルサイズ)に対応可能であるというところが面白い。
※そもそもライツ社のオスカーバルナック氏が、映画用35mmフイルムを使った写真撮影用小型カメラを開発しようとした事が、ライカの濫觴である。したがって、シネ用のKINAMOとライカ判カメラとは同じフイルムをもとに設計されていると考えていいが、ライカはシネ用の2コマを1枚のサイズとしているため、自ずと焦点距離に差異が出てくる。いうなれば35mmフイルムの半分を用いるハーフサイズカメラと、フルサイズカメラとの違いのようなものである。

ボケ具合を見るため、近接の絞り開放値 f3.5で撮影
ピントは、ボラードの白文字“2”に合わせてある。

同じシーンを、f8で撮影
ともにTessarらしいシャープさを具備した描写であるが、開放値がf3.5なので、大口径レンズと異なり劇的な変化ではないようだ。
思えば、1920年代にこれだけのレンズがありながら、当時はフイルムの性能が追いついていなかったのが残念でならない。
現在こうして、デジタルフルサイズ受像子でその性能をフル発揮させているのは、せめてものTessarに対するオマージュである。

Carl Zeiss Jena Tessar 4cm f:3.5 もその一つである。
いつ頃我が家にやってきたのか、何故あるのかもオーナー自ら失念してしまっている。
小さいながらも名玉テッサーであるし、少しのネジ式のヘリコイド (ピント合わせのためレンズを前後する機能) もあるので、M42マウントのボディキャップに移植すれば、面白いレンズになるかもしれないと思って買ったような気がするが、定かではない。
ところがこのレンズがなかなかの曲者である。
フランジバック (レンズからフイルムまでの距離) が40.5mmしかなく、ミラー式一眼レフには利用不可能であることが判った。
それであればライカマウントに改造して、ヘリコイドがあるので目測で距離を測って利用するしかない。
しかしかなり面倒な作業となるため、そのままマイボックスの底に埋もれてしまっていたのかも知れない。
・・・・ところが時代は流れ、“小箱の肥やし”の状況は一変した。
SONYからミラーを使わない一眼レフが誕生し、我が家もそれを導入したことによって、ふたたび謎のレンズが陽を見る日がやってきた。
SONYのEマウントのフランジバックは18mmなので、あと22.5mmのスペースを何とかすれば利用できるのではなかろうか・・・と閃いたわけである。

幸い、手許のヘリコイド群のなかに18~28mmのヘリコイドがあるので、それをかましてみれば上手くいくような気がした。
試しにレンズを当ててファインダーをのぞくと、ギリギリ無限遠が出た!
これで普通のレンズとして使えると判断するや否や、改造にとりかかる。
この改造は簡単な工作で済んだ。
プラスチックのM42のボディキャップに後ろ玉が入るだけの円形の穴をドリルで開けて、あとは座金にある3箇所の止めネジでボディキャップに取り付けるだけである。

(M42のボディキャップに取り付けた改造後の状態)

(裏面の状態)
ところで、このレンズがもともとどんなカメラについていたものかが判らなかった。
Zeissなので、いい加減なカメラにはついていなかったはずである。
レンズのシリアルナンバーは、53万代なので、製造年月は、1922年(大正11年)頃である。
今から95年前のレンズということになる。
この当時の4cmの焦点距離ともなれば、アトム判やベスト半截判などの小型カメラしかない。
あれこれ専門誌を探したり、クラシックカメラ専科のツアイス特集なども漁ってみたが、ヒットなし。
もはや手詰まりかと思われたが、試しにシンプルな項目で、インターネット検索をしてみたところ、思わぬところで発見できた。
ずっと写真機を探していたので発見できなかったが、これは一般的なカメラではなく、映画撮影用の35mmシネカメラレンズであることが判った。

1926年にはツアイス・イコン社に統合される前のドレスデンにあるイカ社のキノモ(ICA-KINOMO)に取り付けられていたレンズである。製造時期もぴったりと合う。
時計針のようなヘリコイド指針は動画撮影のピントあわせ機能用であった。
とにかく、こんなパンケーキレンズが出来上がった。パンケーキというより「回転焼き」のようである。
レンズの出自も判り、改造も完成したところで、試写をするために出かけた。


穏やかな安治川内港越しにUSJのホテルマンション群を狙ってみた。
無限大・絞り開放であるがピントはOK 色合いやコントラストも悪くない。
ただし四隅に僅かに光量不足が見られるが、これはオリンパスPENのような35mmハーフサイズカメラに相当するシネレンズがもつイメージサークルの限界かもしれない。

中央部ホテル上部の拡大・・・これだけ拡大しても、破綻していないところが、さすがTessarである。
同じシネ用レンズとして手許にある戦後のアンジェニューも持ち出してみた。(こちらはフランジバックが17.5mmなので、Eマウントでもやや凹んだアダプターを使用する必要がある。)

このレンズも何に使う目的もなく、だだ梨地の鏡胴が美しいので買ったものだった。しかも捨て値だった。
いまではこの16mmシネレンズ用 (Cマウント) のマウントアダプターが売り出されているため、利用することができるようになった。

こちらは明らかにイメージサークル不足 受像子をAPSサイズに小さくして使わなくてはならない。
映画フイルムのサイズが、35mmと16mmとでは、同じシネレンズでもこれだけの違いがある。そして、フイルムサイズが同じである35mmシネレンズは、そのままでもカメラのライカ判(35mmフイルムのフルサイズ)に対応可能であるというところが面白い。
※そもそもライツ社のオスカーバルナック氏が、映画用35mmフイルムを使った写真撮影用小型カメラを開発しようとした事が、ライカの濫觴である。したがって、シネ用のKINAMOとライカ判カメラとは同じフイルムをもとに設計されていると考えていいが、ライカはシネ用の2コマを1枚のサイズとしているため、自ずと焦点距離に差異が出てくる。いうなれば35mmフイルムの半分を用いるハーフサイズカメラと、フルサイズカメラとの違いのようなものである。

ボケ具合を見るため、近接の絞り開放値 f3.5で撮影
ピントは、ボラードの白文字“2”に合わせてある。

同じシーンを、f8で撮影
ともにTessarらしいシャープさを具備した描写であるが、開放値がf3.5なので、大口径レンズと異なり劇的な変化ではないようだ。
思えば、1920年代にこれだけのレンズがありながら、当時はフイルムの性能が追いついていなかったのが残念でならない。
現在こうして、デジタルフルサイズ受像子でその性能をフル発揮させているのは、せめてものTessarに対するオマージュである。


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