「重要文化財・愛珠(あいしゅ)幼稚園の一般公開」

大阪市立「愛珠幼稚園」といえば、大阪で最も古い幼稚園である。

平成19年12月8日午後の半日だけ一般公開されたので、見学に行った。

今年の6月18日に国の重要文化財の指定を受けたための市民公開デーである。

明治34年築だが、今でも現役の幼稚園として利用している。
利用する園児の安全のため普段は門は固く閉じてあり、関係者以外立ち入り禁止である。

今まで外から眺めるしかなかったが、ようやく内部に立ち入ることが出来た。(念願叶う)


1年前のブログにも載せたことがある。


午後2時頃到着したが、長蛇の列だ。関心の高さがうかがえる。

普段閉じたままの塀重門(屋根がない両開きの門)も本日は開いたままだ。



重厚な玄関は大名屋敷の風情ありますねえ。

昔のままでほとんど手が加えられていないのが嬉しい限りである。


玄関には愛珠の額あり。
そこのランプも古風そのもの・・・

ただ、当日建物内は撮影禁止だったので詳しくは写真を載せられないのが残念である。


2階吹き抜けの明るい遊戯室(当日配布のパンフレットから)

板葺きの床の下は一面にオガ屑が敷かれてあり、クッションと防湿・保温性を高めている。

左隅に見える大時計も明治34年からいまだに現役。近くでよく見ると、米国製のものであった。

明治42年にドイツから購入したイルムラーグランドピアノも見事修復されて現役として活躍中であった。

一緒に連れて行った子供たちは・・・「お寺みたい・・・」との感想。
つるつるになった床のすべり具合を楽しんでいた。

建物に囲まれた園庭は、子供たちの利用を考えて廊下部分からの段差をなくしてある。

バリアフリーの先駆である。

でもよく考えれば、廊下の高さというのは、一般道路からは随分高くなっているので、園庭がその高さになるまで、土盛をしていることになる。
これは大変だ。

2階吹き抜けの遊戯室を外から見たところ。道路部分から床部分が高くなっているのが分かる。

当時の工事技術を考えると、広くはないがこれだけの敷地の土盛をしようとすると・・・フゥ


園庭には、昭和6年築の螺旋式すべり台がある。

滑るところは石造りで、建物とともにこれも重要文化財となった。
重文のすべり台ってこれ一台だけだろうね。
この利用はOKだったので、我が息子は身をもって重要文化財を楽しんでいた。

 


外側から建物はよく見ているが、塀の途中に凝ったデザインの箇所があり、いつも気になっている場所があった。


軒には、「愛」の字が浮き彫りになった軒瓦があるし・・・何か特別な場所に違いない!と思っていた。


きっと非常口じゃないかなあ?と思っていたら、・・・・何と!!内側はトイレであった。

本日解明いたしました。(めでたしめでたし)

右側と左側から二つの棟が合わさる部分を敢えて別棟とし、便所を配し、臭いがこもらないように上部に空気抜きの屋根を配しているのだ。
それが外から見るとなんとも重厚な雰囲気を見せていたわけだ。

裏玄関かなあ?などと思っていたが・・・いや騙された。しかしよく考えた設計がなされているなあ。

もしこの扉を開けるとそこには可愛い衛生陶器が並んでいるだろう。

右側に小便器、左側に大便器が並んでいるのが見えるはずだ。

もちろん非常口としての役割もしているのだろうが。


南北に伸びる壁面を北側から眺める。


やはり大きな寺院の雰囲気があるね。

南の端には、懐かしい銀行名が載ったままになっている看板が取り付けてある

一勧・冨士・興銀のみずほトリオ・・・住友・さくらのSMBCコンビが揃っている。
三菱が見当たらないが、三和・東京のmufgのメンバーが載っている。

・・・これも重要文化財だろうか?


 

 築100年を超える木造建築物が現役なのは嬉しい限りであるが、過去には、この建物にも大変な危機があった。

『昭和20年3月末、愛珠幼稚園の東西にある会社から愛珠幼稚園園舎の撤去願いが大阪市長に出された。
東側の日商と西側の三菱信託である。
いずれも軍のための仕事をしているので、隣に木造の幼稚園があっては、空襲の時に幼稚園が燃えて被害が会社におよぶことになるというのである。3月13・14日の大空襲の後のことであった。
 東側の日商は軍需省重要工場の指定を受け、陸海軍の命を受けた事業をしていること、西側の三菱信託は三菱化成、倉敷工業、倉敷航空等の軍需会社が社屋に入っていることを理由にした。
 その結果、6月25日に園舎の疎開を言いわたされた。つまり取毀し命令である。

 愛珠幼稚園は戦時下とはいえ重要な教育建築物として意識されていただけに、それは関係者をおどろかせた。
園長は、「倉庫、北園舎、たたみ部屋は保存できると信じ」「取り除き時期もなるべく遅く願って了解してもらった」と記録している。
戦時下にあっても、園舎存続のためにねばりにねばっている姿がわかる。
戦争という非常時の中にあって、園舎への愛情と重要建築物という認識がなければできなかった行動であるといえよう。

 7月1日から学徒動員で愛日小学校へ荷物の引っ越しがはじめられた。園舎解体は8月4日に決まった。
しかし、連日の空襲で作業は遅れ、8月15日の終戦を迎えた。

 当時の園長が「取り除き時期もなるべく遅く」と努力したことと空襲による延期とが重なり解体をまぬかれることになったのである。
幼稚園舎としては日本最古の建築物がこうして保存され、築後100年をこえる今も実際に保育の場所として使われている。』

 (参考資料) 赤塚康雄「大阪市における太平洋戦争末期の校園舎疎開について」(天理大学学報第172輯H5抜刷)。

 

このように、まさに「事実は小説より奇なり」を地でいく、極めて劇的な歴史があったのだ。

・・・こうして書いていても胸がドキドキするわい。

もし、終戦が1月延びていれば・・・この建物はなかったであろう。

愛珠幼稚園HP http://www.ocec.ne.jp/yochien/kindergarden/aisyu/

愛珠幼稚園





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長崎の鴉・・長崎阿房列車

段段車窓が薄暗くなり、汽車が次第に濃ひ夕闇へ走り込んで行く時に聞く汽笛の響きは、鼻へ抜けたかさ掻きのやうな電氣機關車の聲よりも、蒸氣機關車の複音汽笛が旅情に相應しい。


          


  いつの間にか窓が眞暗になり、窓硝子に響く汽笛の音が、蒸氣機關車C62の複音に變つてゐる。


          
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