「都会のエアーポケット」
この標題を見て、若い人たちは、なにやら異次元空間を漂うアミューズメントスペースを惹起するであろうが、さにあらず。
ただのエアーポケット・・・いうなれば陥穽・・・取残されたタイムスリップ空間・・・開発の残滓というところであろう。
大阪・キタの繁華街の場末にそういう一角がある。
周りは高層ビルに囲まれ、開発の津波にいとも簡単に押し流されそうな一区画であるが、さにあらず。
どっこい。軒を寄せ合い頑張っているところ。

そんななかで、小生の母親と同年代である女将が老骨に鞭打ってやっている小料理店に久しぶりに仲間と訪れた。
いきなり・・・
仲間A「死んでたらいかんと思て見に来たった!!」
女将「ソリャソリャありがとう。明日死ぬかも知れへんし。ハハハ。」
タヌキの化身のような女将である。
ここでは、女将を「婆サマ」という客はいても懸想する客はいないので、気兼ね不要だ。
誘われるまま時々訪れる。
ここでは、カラオケも使えるが、カラオケの分厚い冊子を見つめる女将の手許があぶない。
女将・・・「メガネどこいったやろ。見えヘンがな。」
仲間B・・・「かなんなあ。こっちで入れるから・・・こっちゃ貸しぃ」
仲間Bがあれこれ操作してエントリー・・・まあ。このほうが手っ取り早い。
さあさ、懐メロ大行進・・・(最近のTVの懐かしのメロデイー番組でもお目にかからないような曲が始まるのだ)
最初は、東海林太郎の旅笠道中(昭和10年)・・・ほんの70年前の新曲
♪夜が冷たい 心が寒い
渡り鳥かよ 俺等の旅は
風のまにまに 吹きさらし♪
いいねえ。世間からのはみ出し者の切なさが身に染みるねえ。
もちろんカウンターの内外・・・大合唱!!
つぎ、
バタヤンこと田端義夫の大利根月夜(一昨日のような昭和14年の作)・・・二番がいいのだ。
♪愚痴じゃなけれど 世が世であれば
殿のまねきの 月見酒
男平手と もてはやされて
今じゃ 今じゃ浮世を 三度笠♪
ううっ。ほんまに愚痴じゃ。愚痴言う前になんとかせんかぁー・・・ダルマ大師の喝!が跳ぶ。
つぎ、勘太郎月夜唄(昨日のような昭和18年の新曲)・・小畑実がんばれっ!!
この曲、先だっての戦争の末期、暗い世相に林長二郎・山田五十鈴の主演で封切られた映画「伊那の勘太郎」の主題歌。
ちなみに、林長二郎って、後年の長谷川一夫ってことは誰でも知ってるよね・・・ほんとかな?
軍時色一色のときにこの絶世の美男美女が主演の痛快娯楽時代劇!!
そして・・・主題歌はヒットメーカーの小畑実だっ!!
軽快なメロデーが暗い世相を吹き飛ばした。ああ楽し。
そりゃヒットしないはずがないわな!!
国民は、ひととき、古きよき平和な日本を味わったのだった。
(いったい、私の歳はいくつ?)
講釈師のように・・・見たこともない事を、見てきたように言うのは・・・かんたろう月夜歌!
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