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大阪偕行社の明治紀念標(2)

(前回からのつづき)

明治35年に、中之島から大阪偕行社の敷地内に移設された明治紀念標だが、その後どのように扱われていたかは詳らかではない。

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大手前高等女学校(現府立大手前高校)の新築された校舎の上からみた風景。

三角地の明治紀念標がはっきりと見える。

紀念標のあたりから大阪城を見れば、現存する最古級の乾櫓のほか、京橋口の楼門と伏見櫓が見えた。


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大手前高女の新校舎完成から少し後の大阪府庁完成の航空写真を見ても分かる。

昭和12年、大阪市が観光誘致のために作成した映画「大大阪観光」にも僅かながらその姿が映し出されている。
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大正13年の大阪市パノラマ地図にも三角地にそびえる紀念標が見てとれる。

砲兵工廠で製造された先端に九本の剣を突き立てた金色の球をいただく巨大な八角錐の鋳造製標柱は遠方からもよく見えたとのこと。(偕小43期・昭和7年卒業生談)


しかし、当時は白黒写真しかなかったため、金色の球とか言われてもピンとこないところであったが、
母校にこの塔を描いた水彩画が残っていた。


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“追手門学院小学校記念室収蔵”

これは、大正5年、大阪偕行社附属小学校高等科に在籍していた第24期卒業生新作義信氏の作品である。
偕行社の前庭から描いたもので、明治紀念標の裏側から見た様子である。

このように茶色い鋳鉄の鉄塔の頂に金色に輝くトゲトゲの球体の装飾があった。

しかし、この絵を見て思うのだが、高等小学校の学童の作品としては非常に大人びているように思える。それは、絵画の先生の手ほどきを受けて描いた旨の但し書きがあったが、それにしても上手な作品である。

また子供でありながら偕行社の前庭には自由に立ち入られたということに驚かされる。


それから、この鉄塔がいつ、なぜ忽然と消え去ったのか、当時の在校生の多くに尋ねてみたが、一向に芳しい回答は帰ってこなかった。

「これだけ大きく、かつ由緒あるものならば、学校から何らかの説明があるはずだが、これに関する説明を先生から受けた記憶がない。そこに建っていたのは知っているが、いつ無くなったのかは知らない。疎開中の出来事だったのかなあ?」(偕小59期・昭和23年卒業生談)


何日撤去されたのか、戦禍で焼失したのか不明であったが、先日母校の先生のご教示により、古い朝日新聞にその記事があることが判った。


昭和18年3月16日(火)朝日新聞4面

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「明治記念標」に赤襷

 そのかみ大阪城見物のお上りさんは必ず訪れた偕行社前の「明治記念標」の鉄塔もいよいよ応召する

 この記念標は基石を含めて高さ約20米、鉄塔の重さ約6000余貫。明治15年5月大阪鎮台の勇士が佐賀役、西南役の勇戦力闘と両役の忠魂を記念して建設されたもの。日清役の後この記念標を中心にして各戦争における第四師団下の英霊をここに慰めたいと明治33年管下の二府五県の賛成を得て財団法人弔魂会が結成され毎年盛大な慰霊祭が執行されて来た。

 その後、官祭招魂社が各府県に建設され、さらに支那事変以来護国神社に統一されているので、この際弔魂会を解散して鉄材を国のお役に立てようと関大阪師団長はこのほど理事会を招集して弔魂会解散を決定した。






これを読むと、各地に国が運営する戦没兵士を祀る神社が出来たので、それに一本化するためこの紀念標は撤去する。という意図に思える。

確かに明治37年6月には内務省が墓碑と紛らわしい建碑を禁止する通達を出したり、明治39年11月には日露戦争の合葬墓碑である陸軍墓地を真田山に建立している。

しかし、そもそもこの紀念標は、戦没兵士の慰霊のため、国威発揚のためのものであり、戦争推進にはあってこそすれ、なくしてしまうと精神的な拠り所を失うことに繋がるのではなかったのか?と疑義が生じる。

それだけに、鉄材が不足し戦争の舞台裏が困窮しているということの、対外的な言い訳のように思われてならない。

この日以降の新聞も調べてみたが、ルナパークの通天閣が解体されその鉄材が供出されるとか、四天王寺の大鐘もお国のために出征だとか、少国民と呼ばれていた子どもたちが見ても「この戦争大丈夫かな?」と思わせるような哀れな記事が続出する。


またこの新聞写真をよく見ると、周囲の鉄柵はすでになく、木枠の柵になっているが、本体に先立って、鉄柵が供出されたようだ。


金沢・兼六園にも、同様の「明治紀念之標」がある。
中央に日本武尊像を、左に石川県戦士尽忠碑を据える明治紀念之標は、西南戦争で戦死した郷土軍人の霊を慰めるものらしいが、こちらはその供出を逃れている。



ともあれ、大阪のものは昭和18年には撤去されたものと思われるが、その跡地は戦後しばらくはそのままとなっていたようだ。


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昭和24年の中学校舎完成のときは、その部分(左端の三角部分)はまだ校地にはなっておらず、柵の外にあった。

また基壇部分が丸い形で残っている。


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昭和35年の航空写真でもそのままなので、校地に組み込まれたのはなかり後年になってからであることが分かる。


とにかく長年にわたって気になっていた明治紀念標であり、その資料も少しずつ収集していたが、撤去(供出)された年が特定できたため、ここに一気にまとめてみた次第である。



なお、平成21年4月21日産経新聞の夕刊経済面で「幻の明治紀念標」として追手門学院理事長大木令司氏が記事を寄せておられたのでご覧の方もあると思われるが、もちろん対象となっている明治紀念標は拙稿と同じものである。



これも一般の方にとっては甚だつまらなく退屈な話題だったにも拘らず、最後までお付き合い頂き、カタジケナイ。


(おわり)









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長崎の鴉・・長崎阿房列車

段段車窓が薄暗くなり、汽車が次第に濃ひ夕闇へ走り込んで行く時に聞く汽笛の響きは、鼻へ抜けたかさ掻きのやうな電氣機關車の聲よりも、蒸氣機關車の複音汽笛が旅情に相應しい。


          


  いつの間にか窓が眞暗になり、窓硝子に響く汽笛の音が、蒸氣機關車C62の複音に變つてゐる。


          
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