終戦の日特集?戦後最初の六法全書(臨時版)

8月15日の終戦記念日がまたやってきた。

・・・こういう日はいつも不思議な感覚にとらわれるのだ。


それは・・・


小生が生まれるほんの14年前まで、日本は世界中を相手に「戦争」というものをしていたという事実を再認識してしまうという事。


広島・長崎に原爆が落とされたものほんの14年前の出来事であり、度重なる空襲で大阪市内のほとんどが焼け野原になったのも、オギャアと産み落とされるほんの14年前の事だった。


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昭和20年6月1日 米軍機からの空爆により炎上する大阪港周辺(現:海遊館・サントリーミュージアム附近)

このあたりの空襲は、焼夷弾ではなく爆弾だったので、徹底的に破壊され、焦土と化した。

生まれるほんの14年前に、伯父は応召ののち昭和20年1月北支で戦死し、父は縁故疎開として親元を離れ、岡山・矢掛町でガリガリに痩せながら少国民を務めていた。母はまだ幼かったので両親と一緒にはいたが、明石市内で芋のツルばかりを齧っていた。


今から遡ること14年前といえば平成7年、阪神淡路大震災の発生した年だった。あの日のことは忘れようにも忘れ得ない。

そう思うと14年間なんてほんと昨日のような感覚なのだ。






戦後64年・・・平和が当然と思われて「平和ボケ」などと揶揄されている現在・・・第二次世界大戦の終結とともに今までの呪縛が解けたような喜びと戸惑いを現代に伝えてくれる書物が手許にある。


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昭和22年3月に岩波書店から戦後はじめて刊行された「六法全書臨時版私法篇」である。


今の六法に比べ厚さは僅か10mmと極めて薄く、少々頼りなげなものであるが、その前書きを読むと、その小さな六法全書に対する編集者である末川博博士の喜びと惑いがひしひしと感じられ、滋味深い佳書となっている。


当時といえば、日本国憲法が前年の昭和21年11月3日に公布され、施行日である昭和22年5月3日を間近に控えた時であり、滝川事件で京都帝国大学を去った末川博博士は、大阪商科大学教授を経て昭和21年に立命館大学の学長の座に就いていた頃である。

六法-1

次にその前書きを掲載する。

岩波書店六法全書臨時版私法編「前書き」

 昭和五年の春、当時としては画期的だと誇ることを許されるであらうやうな内容と形式とをもつて、殊に基本的な法典には参照条文及び事項索引を附けるといふ全く新しい形態をととのへて、本六法全書の初版を出して以来、毎年版を改めるたびに増補改訂を施しながら、約十五年間刊行を続けて来た。

 ところが、昭和十七年頃から、戦争の推移につれて、かういふ精細厳密な印刷物の出版は、だんだん困難を加へ、発行も逐次おくれ勝ちになり、やがて昭和十九年版は、せつかく整版その他準備万端ととのったのに拘らず、印刷中のものも製本中のものもすべて焼失して、遂に発行不能の状態に陥つてしまつた。

 その後、何とかして一日も早く復刊したいと、焦慮もし努力もしたのであるが、諸般の情勢は思ふにまかせず、たうたう今日におよんだのである。

 かやうにここ三年間本書を世に送ることができなかつたのは、已むを得ない客観的な事情によるとはいへ、私どもとしては、長い間本書が江湖各方面から受けてゐる信頼と期待とを裏切る結果となつたことを思ふて、まことに申訳ない次第であることを恐縮してゐる。

 そしてその信頼と期待とに副ふやうに、復刊を急がねばならぬ責任の重大なことを痛感してゐたのである。
 
 しかし終戦後になつて出版界の事情は必ずしも好転したとはいへぬ上に、重要な法令の改廃が頻繁に行はれて、実は、それをどう取扱つてよいか、当惑せざるを得ない有様である。といつて、手許に六法全書がなくて困つてゐられる多くの方々のことを考へると、いつまでも拱手して見送つてゐるわれには行かない。
 
 そこで、思ひ切つて、取り敢へずの措置として、この臨時版を出すことにきめたのである。

  (後略)

   昭和二十一年九月                    編輯代表者  末 川   博




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Comment

2009.08.16 Sun 17:18  |  

末川博博士の序文、ご紹介を頂きありがとうございました。博士とファジーさんの深い思い、しっかりと受け止めたいと思います。

  • #HF2N2N4Y
  • ぼんくらオヤジ
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2009.08.16 Sun 22:00  |  もしや

ファジーさんの中の人、もしくは御尊父さんが、西天満で生業をされておられるのでしょうか。
もしやわが義弟と同業者とか。

末川といえば、衣笠の立命館に名を冠した建物がありますが。

  • #JyN/eAqk
  • なにわ
  • URL
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2009.08.16 Sun 23:22  |  *ぼんくらオヤジ さん コメントありがとうございます

昭和の高度成長期を子供として見つめてきた小生です。偉そうなことは申しませんが、戦争だけは反対です。
昔は昭和11年生まれの母が「戦争になってこの子たちが兵隊に捕られるのは絶対いやや。」と申していましたが・・・その子が親の立場になると、全く同じ感情になりました。

2009.08.16 Sun 23:39  |  *なにわさん コメントありがとうございます。

義弟さんのご活躍は生憎存じませんが、西天満界隈は、ふらふらとよく立ち寄っています。老松町とかは昔の風情が良く残っている地域だと思います。いつまでもその風情を留めてもらいたいものです。

末川さんのこの言葉は、少なくともその恩恵を受ける者にとっては、少なからず胸打つものと思います。

2009.08.20 Thu 17:33  |  末川先生の声

母校が母校なもんで末川先生の名は目にも耳にもしておりました。過日NHKラジオで先生の声を初めて聞く機会がありましたが、非常に穏やかな口調が印象的でした。

  • #-
  • サットン
  • URL

2009.08.20 Thu 21:54  |  サットンさん こんばんは

立命館大学の末川博士なので、やはりサットンさんのコメントがないと締まりません。
コメントありがとうございます。

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 阿房(あほう)と云ふのは、人の思わくに調子を合はせてさう云ふだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考へてはゐない。
 
 用事が なければどこへも行つてはいけないと云ふわけはない。
 なんにも用事がないけれど、汽車に乘つて大阪へ行つて來やうと思ふ。   
    ・・・内田百閒「特別阿房列車」


        

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長崎の鴉・・長崎阿房列車

段段車窓が薄暗くなり、汽車が次第に濃ひ夕闇へ走り込んで行く時に聞く汽笛の響きは、鼻へ抜けたかさ掻きのやうな電氣機關車の聲よりも、蒸氣機關車の複音汽笛が旅情に相應しい。


          


  いつの間にか窓が眞暗になり、窓硝子に響く汽笛の音が、蒸氣機關車C62の複音に變つてゐる。


          
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